11 アイ ラブ KYOTO 【にしゃんた こらむ】
僕はスリランカに帰るつもりはありません。残りの人生を、愛する京都で過ごそうと、心に決めています。もちろん帰省はしますよ。たまにはね。
17才でスリランカを出た時は、こんな展開になるとは思ってもいなかった。いつの間にか、京都という町にこだわるようになってたんです。一体なんでなんやろう? 時々、自問するんですわ。
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突然やけど、恋愛って色んな形がありますよね。
最も理想的やのは、もちろん相思相愛でしょう。でも、「片思い」っちゅう恋愛のパターンもある。「愛されたい。愛されることが幸せなんや」っていう人もいれば、「お前が俺をどう思ってもええ。俺はお前が好きやねん」っていう人もいる。
目の前に2人の女性がいるとします。一人は、すごく優しくて温かい。おまけに向こうからアプローチしてくれる。「おいで、おいで」って手を振ってくれる。もう一人の女性は、ツンとしていて見向きもしてくれない。冷たい女。まるでこっちには無関心。
こんなシチュエーションで、皆さんならどう出ますか?
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アプローチしてくれる優しい彼女と一緒になるのは、簡単やと思う。ある意味、エネルギーの節約やしね。でも、僕はどっちか選ぶとしたら、ツンとしている彼女を何とかしたい。と、思うんちゃうかなぁ。
追っかけても振り向いてくれるとは限らん、ツンとした女の子に心惹かれる。冷たくされればされるほど、ますます彼女を追っかける。僕はそんな男ですわ。いつかは自分の彼女にしたくて、冷たい彼女を、一生懸命に口説き続ける。
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僕は、スリランカのジャヤシンハ家ちゅうとこの、長男として生まれました。両親に何不自由なく育ててもろうて。スリランカでは平均的な家族で、特に裕福やったわけでもないけどね。
うちのおかんは、電話をかけてきては、口癖のように「いつ帰ってくるの? 早く帰っておいで」って言うんです。
「何が欲しいの? 家か? 建ててあげる。車か? 買うてあげる。仕事か? いい職を探してやる。なんやったら、いいとこのお嫁さんも紹介するよ。欲しいもの何でも与えてあげるから、スリランカに帰ってきなさい」って。
残りの人生を京都で過ごそうと心に決めている僕は、そのたびに「京都に住みたい」って説得するんです。もちろんおかんは、「京都の何がいいの?」って聞いてくる。
32歳にもなって、乗り物は自転車。住まいは小さい賃貸宅。結婚もまだ。おまけに、この年になっても、親孝行ひとつ出来へん。最近では、豊かな日本で暮らす僕より、スリランカの実家の方が、物が豊富になってきてるんですわ。車2台に、洗濯機2台に・・・。7つ年下の妹は、もう一児の母。
おかんには、何も手に入れていない息子が、幸せに映らないようです。京都にこだわる理由の、シックリくる説明を求めてくる。
周りの日本人も不思議に思てるみたいやね。「帰ったらえらい金持ちでっしゃろう」とか「帰ったら国の偉いさんになるんでしょう」とか言うてくる。みんな、帰ることを前提にしてるんですわ。
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よう考えたら、僕の初心もそんなんやった。誰も行ったことが無い日本に行って、誰も知らない事を勉強して、スリランカに戻ろう。富と名声を手に入れよう、ってね。
富と名声なんて、今の僕やったら簡単に手に入るんですよ。すぐにスリランカに帰るだけでいいんです。日本人が、子供の頃から塾に通うたり、難しい大学を受験したりして、ようやく手に入れるものが、それだけで自分のものになるんですわ。
でも、僕が本当に欲しいものは、「京町屋に住む 普通のおっちゃん」になること。細々とした素敵な生活。これはめっちゃ難しい。どうしたら、それが手に入るんやろ?
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もちろん、弱ったり、弧独を感じたり、自分の無力さに気づいたりすると(二日酔いの時が多いですわ(笑))「日本で何してんやろう?」って思うこともあります。
それでも京都にこだわる理由。最近になって、なんとなく、わかってきた様な気がするんです。
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京都は僕にとって、冷たい女性なんかもしれん。ツンとしていて、いつ振り向いてくれるかわからん女性。
欲しいものをすべて与えてくれる、スリランカという温かい女性がいるのに、ツンとしていて自分のものにならない、京都という女性を追っかけている。一生片思いのままかもしれんけど、僕は京都を追っかける。いつかは僕の彼女になっておくれって思ってる。疲れたり、弱ったりすることもあんねんけど、「京ちゃんよ。必ずお前を落としてやんねん」ちゅう気持ちは決して消えることはない。
たくさんの人の優しさがあったから、今の僕はあるんです。感謝してます。それでも、京都を愛しているんです。おかん。