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HOME >> 【 コ  ラ  ム  な ど】 >> 62 小京都に教えてもらった 【にしゃんた こらむ】

62 小京都に教えてもらった 【にしゃんた こらむ】

岐阜の郡上八幡にお住まいの井上先生のところに、遊びに行きました。むかし足の手術でお世話になった方ですわ。3年ぐらい前から「来なさい、来なさい!」って言われ続けていて、やっと実現したんです。

新幹線で岐阜羽島まで行ったら、井上さんが迎えに来てくれていた。当時の思い出を話しながらお家のほうに向かいました。で、朝9時ぐらいに着いたのもあって、途中、喫茶店に立ち寄ったんです。

スリランカ生まれの僕は、いつも紅茶を飲んでいると思われがちやけど、コーヒー派です(非国民?)。この日も、ひとこと。「すみません、コーヒーお願いします」

すると、思いもよらない質問をされた。
「サンドイッチですか?トーストですか?」
「へ? サンドイッチ?」

「はい、かしこまりました」
「え、ええ……??」

昨日のお酒が残っているかもしれない。冷静さを保ちながら、出てくるものを待ちました。そして……目の前に並んだものを見て、頭のなかは完全にパニックですわ。確かに、コーヒーは出てきた。でも、まったく頼んだ覚えのない、サンドイッチにサラダ。さらにさらに、味噌汁と卵まで並んでいるではありませんか!!!

日本語に対する自信が、木っ端微塵に砕かれた僕。でも、井上先生によると、このあたりでは当たり前のことらしい。同じ日本でも、いろんな文化があるんですねぇ。

井上さんの口癖は「郡上八幡はいいとこだー」。井上さんは生まれも育ちもこの町。子供のころの話を嬉しそうに喋らはります。

「自分でもはっきり言えるぐらい、子供のころは悪かったよ」
「何をしてたんですか?」
「むかし、ここらへんはみんな朗らかでね。家もそうやけど、車も鍵をつけたままとめとった。それで子供のころは、誰がいちばん多く車の鍵を盗んでこれるか、競争してたんですわ。親にバレても、どれがどの車のキーかわからんで、困りましたな」

井上さんの話は続く。「車の鍵がなくなっても、それは子供のいたずらやって、みんなが知っとった。ほんまもんの泥棒なんて、おらんかったですわ」

カナダではいまでも、家に鍵をかけないそうですね。むかしの日本もそうやったんやなぁ。ほのぼのとした生活空間。

郡上八幡は、良かったです。町屋が軒を並べ、水が豊富なところです。色鮮やかな鯉が気持ちよさそうに泳いでるし、疏水の水で野菜を洗っている人もいて、美味しそう。

井上先生の郡上八幡自慢。口癖のように発する言葉が、もうひとつあります。

「うちは『小京都』なんです」

すごく自慢気です。いま日本には54ヶ所も「小京都」があるんだそうです。調べてみたら、実は全国京都会議が、「小京都になる条件」っていうのを定めてるんですわ。

1. 京都に似た自然景観、町並み、
  たたずまいがある。
2. 京都と歴史的なつながりがある。
3. 伝統産業、芸能がある。

千年も都だった京都は、たいてい他の土地とも歴史的につながってますわね。伝統産業や芸能かって、まぁ何かありますよ。問題は、自然景観とか町並み。僕がこれまで歩いた小京都は、保存地域をつくってむかしの良さを保とうと一生懸命でした。たとえば津和野では、町の景観を保つために、電線を地下に潜らせてましたわ。

でもね、ところが、本家本元の京都が、どんどん変わってしまってるんです。僕は京都でグルメ番組の司会をやっているんですけどね。僕は喋るだけでいいんやけど、カメラマンの方は、京都らしいカットを撮るのに苦労してはります。ちょっとアングルが変わるだけで、電線が入ったり、はたまた、路上駐車のクルマが入ったり……。

京都は、町屋がどんどんなくなって、マンションブームのど真ん中。町屋で暮らしたい僕は、空き家らしき町屋を見つけると交渉に行くんです。でもたいてい、大企業の不動産屋さんに買い占められてて、数件残っているまわりの町屋が空くのを待っている状態らしい。そこが空けば、大きなマンションが建つんですって。

日本には、「小京都」であると認められたがっている地域がたくさんあるんです。ほんまもんの京都に住んでいる僕たちは、もっとほんまもんの京都を大事にせなあかんね。時間があるときに「小京都」を歩いて、「うちは小京都なんです」って自慢げに語る人々の姿を、目に焼きつけなアカンね。

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