93 J君との愉快な日々 【にしゃんた こらむ】
今大学の講義は休みですわ。学生もあっちこっち旅行なんか行ったりしているみたいです。そんななかこの前僕の携帯電話に一本の電話がかかって来た。「もしもし」と出たのですが、電話の向こうは英語です。話を聞いてみるとそれはJ君。J君はカナダからの僕の昔の教え子です。
僕は日本の語での講義以外に、外国からやってくる短期留学生のために英語でも国際経済論の講義も持って、彼はそこの学生だった。決して英語が上手とはいえない僕にとってこの講義は少し神経質になる。学生の協力も心でいつも求めてしまう僕であるが、J君はよく気が利く学生で、なにかと助けてもらった記憶なんかもある。勉強に対しての姿勢も真面目な子です。
そして先ほどの電話の内容ですが、僕の英語の理解力が正しければ「先生2週間、居候させて下さい」と言うものです。僕は泊めてほしいということは了解できたのですが、まさか2週間てな話は僕の勘違いだと思って真剣に考えなかった。
約束の日、J君は早朝からやってきたときはなんか起きそうな予感がした。右手には人が余裕で入るぐらいに大きな鞄に反対側の手には大きな枕。安く上げようと夜行バスで来たようやったのですが、荷物の多さを見たときにこれは2週間は余裕で泊まるわ、早くに起こされて、眠たいななか僕は悟った。それから、僕らの共生生活が始まった。短くて濃い。
J君は比較的早起きです。誰も居るはずのない彼の部屋から9時ぐらいにしゃべり声が聞こえてくる。朝から世界を相手にパソコンのゲームをやっていて、どこかの国の人とインターネット電話でしゃべっているようです。10時になると1回仮眠を取る。お昼の2時ぐらいに起きて近くで紹介してあげた定食屋さんでご飯を食べに行く。帰ってきてもう1回パソコンに向かって、夕方6、7時過ぎぐらいには飲みに行く。帰りはもちろん朝方です。
僕は仕事をして遅くまで起きていたりすると、幸せそうな顔して僕を相手に良く1人で喋る。なんだか、こっちまで幸せになるような気がする。家には1つしか鍵が無いので、共有しようと、2人で家の玄関に鍵の隠し場所を決めた。だが、J君が鍵をもって出かけていたり、鍵をかけて爆睡していたり、自分の僕のはずねんけどと思いながらも、家に入れなくなったことはこの短期間でも数回。学校の休みも、豪快そのもの。
Jは面白い子で、女の子を目の前にして「可愛い」って言っているつもりが「あなたが怖いですね」って言ったり、「銀座に行ってくる」って出かけて行くのだがそれが近所の「神社」だったとか、ネタに事欠かない日々であります。
この前、僕が出かけていて帰宅し時の話しです。家に入って直ぐに異変に気づきました。玄関にはなんと洗剤の山が。周りを見渡してしばらく、状況がやっと把握できた。洗剤と並んで数日分の新聞と数日で期限が切れるという何かの割引券が。そうだ、僕は職場で読んでいるからとずっと断り続けてきた新聞の契約をJ君は僕がいない間にしてしまっていた。
酔っ払って幸せそうな顔して帰ってきたJ君に尋ねると、「契約なんかしてないよー。紙に名前と携帯の番号を書いただけです。サービスって洗剤をくれたからもらったよー。」さらには「ビールも好きか?って」新聞拡張業務の方に聞かれて「好きでーす」って言ったら「今度持ってきてあげる」って言われたよって勝ち誇らし気に言うなり、次の瞬間いびきをかいて寝ていた。やっぱり、J君は憎めない。
J君とは、20年前に留学してきた僕などとは時代流れの速さなど取り巻く環境もまるで違うのかもしれない。でも、やんちゃで元気一杯に明るい日々を送っている彼を見て、時代を超えてだれでも懐かしめるものが見えてきたと同時に、言葉には出来ない、なになが忘れ去ったものを思い出したような気がした。J君は将来は天然資源関連の商売に就きたいと活き込んでいる。
今の若人には、これからも少々の失敗を恐れず、国境を渡って行き、たくさん勉強したくさん遊び、学生らしくすくすく育ってほしいと思う。僕などは、かつての自分達を重ね合わせ、懐かしむと同時に、かつての恩返しも兼ねて彼らを見守れる大人でいられる幸せを噛み締めたらと思います。